アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2012年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第128回
古典ギター歌曲の楽しみ

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 128
A Pilgrimes Solace / John Dowland

2012.8.30 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





19世紀ギター歌曲
 西洋で印刷の始まった16世紀から現代に至るまで、ギターの為の作品は途切れる事なく出版されてきました。ルネサンス時代には小型の4コース複弦のギター、バロックには5コース複弦のバロックギター、そして古典から現代にはそれぞれの時代の6弦単弦のギターのために、時代の様相を繁栄したギター作品が数多く生み出されました。
 歌曲の伴奏楽器としてもギターは常に愛好されており、16世紀には当時流行していたリュート歌曲に比べるとわずかな数ではあるものの、4コースギター伴奏付きの歌曲集も出版されています。そしてなによりルネサンスギターは即興的に和音をかき鳴らせる気軽な伴奏楽器としても重宝されました。
 バロックの時代は通奏低音という伴奏形態が主になり、様々な楽器で演奏可能な為にギター伴奏と明記された曲はほとんど見受けられませんが、通奏低音の中でのギターは繊細なアルペジオや軽やかなリズムを生み出す楽器として盛んに用いられました。
 ルネサンスからバロック時代に音楽の中心的存在であったリュートは、古典期に入りその様式に対応出来なくなり衰退します。ルネサンス初期におけるリュートは6コース/11本の弦が、そしてバロック後期のリュートには13コース/24本の弦が張ってありました。リュートは音楽様式の移り変わりに調弦を変化させたり、低音側に音域を広げる事で対応してきたのですが、物理的に極限まで弦を増やしてしまったリュートは、音量や明確な強弱を求められる古典期の要求には応えることが出来なかったのです。それに比べ、5コースと元々身軽であったバロックギターは撥弦楽器の常であった複弦を潔く捨て去り、6弦単弦となり、より身軽で音域の広い楽器にと変化し、古典様式に応える楽器となったのです。
 19世紀にはギターの為の多くの優れた作曲家、演奏家、製作家が輩出され、歌曲においては作曲家自らがピアノとギター両方の伴奏譜を記した曲集も多く出版されました。またピアノ伴奏歌曲として作曲された曲の伴奏を当時のギタリストがギター伴奏に書き換える事も頻繁に行われ、ギターはサロンの楽器として大層もてはやされました。
 19世紀以降、演奏会場の拡大に伴いギターもピアノ同様、大型化され大きな音を求めるようになりました。しかしながら、今宵はここアイヴィーチャペルの豊かな響きの中で、古典期の親密なサロンの雰囲気をお楽しみ下さい。




Classical Songs with Guitar

●The Light of Other Days 嘗ての日々の光●
Ballad in M.W.Balfe's Grand Opera / The Maid of Artois / arr. C.M.Sola
かつての喜びも悲しみも過ぎ去り 私の心は寂しさを感じない
●Flora McDonald フローラ・マクドナルド●
M.Kelly / arr. C.M.Sola
ダンモアの塔に投獄されたフローラを助けに勇敢な騎士は遥々やってきた
●When the dew is on the grass 草原に露が落ちる時●
Mrs. Cornwell Baron Wilson / arr. Alexancer Lee
やさしい風が月の光の木々をそよぐ時 星が海にうつる時 恋に落ちる
 ●Abschied 別れ Goethe / Mauro Giuliani 1781-1829 ●
君はなぜ僕から隠れようとするのか 逃げないで もう君を邪魔しない
●An das schicksal 聞け運命よ Von Reissig / Mauro Giuliani●
私の言葉を聞け 私は安らぎを求めている 運命よ私を連れて行ってくれ
 ●Rondo Allegretto ロンド / Fernand Sor 1778-1839 ●
●Que ne suis-je la fouler 僕がシダの葉だったら●
Traditional French folk melody
君が身を休めるシダの葉だったら 君の足元に咲く花なら良いのに
 ● Serenade セレナーデ / Charles Gounod 1818-1893 ●
Victor Hugo / arr. J.F.Carl Abelspies
君が歌う時 その声は僕の一番すてきだった日々を思い出させる
 ●Mignons Gesang ミニョン/ Ludwig van Beethoven 1770-1827 ●
Goethe / arr. Anon.
知っていますか レモンの花咲く国を 愛する人 連れて行って
●Andenken 君を想う/ Ludwig van Beethoven ●
Goethe / arr. A.Diabelli
夜鳴鳥のさえずりを聴き 夕映えの木陰の泉で 君を想う
●Standchen セレナーデ / Franz Schubert 1797-1828 arr. J.K.Mertz ●
●My Dark Hair'd Girl 黒髪の少女●
C.E.Horn / arr. T.B.Phipps
巻毛は絹 首は白鳥 唇は上品で歯は真珠 この想いはかわらない
●Cherry Ripe 熟したチェリー●
C.E.Horn / arr. C.M. Sola
”熟したチェリーはいかが”と私は叫ぶ 夏の陽は微笑み チェリーは育つ



●平井 満美子 Mamiko Hirai/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD13点全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。

●佐野 健二 Kenji Sano/ 19世紀ギター Lacote Guitar = Gary Southwell 1991
 英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。 EMC主宰、 相愛大学非常勤講師。




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